アルカリイオン水は、健康や美容に良いとされる一方で、実際の効果や安全性に疑問を持つ人も多いかもしれません。
本記事では、アルカリイオン水の特徴や、アルカリ電解水・浄水器との違いを分かりやすく解説します。
また、料理や健康面での具体的な効果、飲用時の注意点についても詳しく紹介していきます。

1.アルカリイオン水とは?
アルカリイオン水とは、水道水を電気分解して作られる「電解水」の一種です。
主に飲用目的で生成されるもので、pH9〜10の弱アルカリ性の液体を指します。
このアルカリイオン水には、身体の調子を整える働きがあるとされ、活用されることが多いです。
家庭でアルカリイオン水を作るには、「アルカリイオン整水器」という専用の機器を使用します。
この整水器は、水道水をろ過した後、直流電流を流して電気分解をおこなう仕組みです。
電気分解によって、水分子(H₂O)が分解され、陰極側では水酸化物イオン(OH⁻)や水素(H₂)、陽イオンなどが生成されます。
また、電気分解の過程で、陽極側にはpH4〜6の「酸性イオン水」も生成されます。
酸性イオン水は、洗顔や洗浄に適しているものの、飲用には向きません。
1-1.アルカリイオン水って怪しくないの?
アルカリイオン水は、1990年代のブーム時に「奇跡の水」や「魔法の水」として過剰に宣伝されました。
その影響で「怪しいのでは?」「危険なものでは?」と疑う人もいるかもしれません。
実際に、当時は一部の販売会社が誇張した宣伝をおこない、トラブルになるケースもありました。
しかし、アルカリイオン水自体の効果が根拠のないものではありません。
アルカリイオン水の研究は1950年頃からおこなわれ、1965年には厚生省(現・厚生労働省)がその有効性を認めています。
また、アルカリイオン整水器も、1966年に家庭用医療用物質生成器として認可を受けました。
さらに、1990年代のブーム以降も大学教授や医師による検証試験が実施され、安全性や有効性に関する科学的な研究が続けられています。
過去の過剰な宣伝による悪い印象が残っているかもしれませんが、現在では科学的根拠に基づき、安全に使用できる飲用水として評価されているのです。
1-2.アルカリイオン水とアルカリ電解水の違い
アルカリイオン水とアルカリ電解水はどちらも電気分解によって作られるアルカリ性の水ですが、用途や性質に大きな違いがあります。
アルカリイオン水は、pH9〜10ほどの弱アルカリ性の水です。
整水器を使用して水道水を電気分解することで生成され、日常的な水分補給に適しています。
一方、アルカリ電解水は、pH11〜12.5と強いアルカリ性を持ち、主に掃除や洗浄に使用される水です。
油汚れやたんぱく汚れを効果的に落とす特性があり、飲食店や施設などで洗剤代わりに使われることもあります。
ただし、アルカリ性が非常に高いため飲むことはできません。
アルカリイオン水は飲料水、アルカリ電解水は洗浄用として、それぞれ異なる目的で利用されています。
用途を理解したうえで、適切に使い分けることが大切です。
1-3.アルカリイオン整水器と浄水器の違い
アルカリイオン整水器と浄水器はどちらも水をきれいにする装置ですが、その仕組みや目的に違いがあります。
浄水器は、水道水に含まれる残留塩素や不純物を取り除き、安心して飲める水を作ることが目的です。
主にフィルターを通してろ過する仕組みで、水の味やにおいを改善する効果もあります。
一方、アルカリイオン整水器は浄水機能を備えつつ、さらに水を電気分解することでアルカリイオン水と酸性水を生成します。
飲用に適しており、まろやかな口当たりが特徴です。
浄水器が「きれいな水を作る」装置であるのに対し、アルカリイオン整水器は「健康を意識した水を作る」装置だといえるでしょう。
どちらを選ぶかは目的次第ですが、普段の飲み水をよりおいしくしながら健康を意識したい場合は、アルカリイオン整水器がおすすめです。
2.アルカリイオン水にはどんな効果がある?
アルカリイオン水は、おいしい水という以外にもさまざまなメリットがあります。
効果を知ることで、アルカリイオン水をより便利に利用できるでしょう。
ここでは、アルカリイオン水の主な効果を3つ紹介します。
2-1.料理を美味しくする
アルカリイオン水を使うと、料理の風味や食感が向上します。
たとえば、ご飯を炊く際に使用すると、米のデンプンが均一に糊化し、粘りのあるふっくらとした食感に仕上がります。
また、パン作りでは、生地の発酵を促し、もっちりとした弾力のあるパンが焼き上がります。
アルカリイオン水は食材の成分を抽出しやすいため、だしを取る際に使用するのもおすすめです。
昆布やかつお節のうまみがより濃く引き出され、料理全体のクオリティアップも期待できるでしょう。
さらに、野菜のアク抜きにも効果的です。
ごぼうやタケノコのアクを短時間で除去できるため、風味を損なわずに調理できます。
肉や魚の下処理にも役立ち、レバーやマトンなど臭みのある食材をアルカリイオン水に浸すことで、特有のにおいを軽減できます。
また、煮込み料理では脂肪分が抜けやすくなり、さっぱりとした仕上がりになります。
2-2.口臭を予防する
アルカリイオン水は、口の中の汚れを落としやすくするため、口臭予防に役立つと考えられています。タンパク質など、口内の汚れには酸性の性質を持っているものも多いです。
アルカリイオン水はこれを中和し、歯磨きやうがいの際に口の中をすっきりとさせる効果が期待できます。
また、適度なアルカリ性を持ち、毎日の口内ケアにも安心して使用できる点が魅力といえるでしょう。
2-3.健康を増進する
アルカリイオン水は、身体の健康をサポートする効果があることが認められています。
さらに、近年の研究では、アルカリイオン水を飲むことで腸内の、ビフィズス菌をサポートすることが報告されています。
今後もさらなる研究が進められ、健康効果についての新たな知見が期待されているのが現状です。
3.アルカリイオン水の飲用時の注意点
アルカリイオン水は健康に良いとされていますが、飲用時にはいくつかの注意点があります。
ここでは、アルカリイオン水を飲むときの注意点を3つ解説します。
3-1.アルカリイオン水のpH値は徐々に上げる
アルカリイオン水を初めて飲む場合は、いきなり高いpH値のものを摂取せず、中性(pH7)に近い水から始めましょう。
pH9.5のものが一般的とされていますが、高いアルカリ性の水が合わないこともあるため、いきなりこの数値の水を大量に飲むのは危険です。
pH7の水に慣れたら、pH7.5、pH8と徐々にpHを上げていきます。
体調を確認しながら、2週間ほどかけて段階的に上げると安心です。
また、pH10以上のアルカリイオン水は飲用には適していません。
pH11以上になると体内の電解質バランスに影響を及ぼし、高カリウム血症を引き起こす可能性もあります。
アルカリ性が強ければ良いわけではないため、適正範囲内での摂取を心がけましょう。
3-2.薬と一緒には飲まない
アルカリイオン水は一般的なミネラルウォーターとは異なり、アルカリ性が強い水です。
そのため、薬と一緒に飲むことで薬の成分に影響を与える可能性があります。
特に、医療機器で生成されたアルカリイオン水は、医薬品と同様に慎重に扱うべきです。
具体的な影響が医学的に詳しく検証されているわけではありませんが、安全のために薬はアルカリイオン水ではなく、浄水や常温の水で服用するようにしましょう。
3-3.腎疾患がある場合は飲まない
腎疾患がある人は、アルカリイオン水の飲用を控えましょう。
腎臓は体内の水分やミネラルのバランスを調整する働きを担っている臓器です。
腎機能が低下していると、アルカリイオン水による影響を受けやすくなります。
特に、カリウム排泄障害のある人がアルカリ性の水を過剰に摂取すると、体内のカリウム濃度が異常に上昇し、高カリウム血症を引き起こす恐れがあります。
その結果、不整脈や筋肉の異常収縮などの深刻な症状を伴うことも考えられるのです。
また、腎疾患だけでなく、その他の疾患で治療中の人も飲用する前に医師に相談してください。
体調に異変を感じた場合は、すぐに飲用を中止し、専門医の指示を受けるようにしましょう。
4.まとめ
アルカリイオン水は、電気分解によって生成される弱アルカリ性の水で、身体の調子を整える効果が認められています。
飲用水としての安全性は確立されており、日常の健康維持や料理の品質向上が期待できるでしょう。
安心して使用するためには、アルカリ電解水との違いや、浄水器の違いを理解することが重要です。
また、初めて飲む場合は、pH値を徐々に上げることや、薬と併用しないことなどの注意点を守る必要があります。
アルカリイオン水の特徴を正しく理解したうえで、ぜひ、日常生活に取り入れてみてください。